新潮45の今月号(7月号)の内容が、ネットで話題になっていた。
私も気になって図書館で少し読んだが、
これは買って読んだほうがいいなと思い、
久しぶりにこの手のオピニオン誌を買って帰り、
家で読んだ。これはその感想である。
最初の舛添要一氏の論文については、次の小沢一郎論と
関連するので除外する。
まず、第一特集「小沢民主の病理を衝く」は、
タイトルから受ける小沢批判という印象と異なり、
批判派と支持派の割合が半々で、
結果的にそれなりにバランスのとれた構成となっていた。
批判派のうち、産経記者 阿比留瑠比氏と
毎日主筆 菊池哲郎氏は、鳩山前総理は言動の軽い人間で
あるという従来どおりの批判だった。
一番偏向していたのは中央大教授 長尾一紘氏で、
小沢氏の野戦軍司令官発言の言葉尻をとらえて、
また小沢は媚中派だ、胡錦涛のポチだ、的な攻撃をしている。
本当に小沢氏の言いたい事は、民自合併のとき、
私は一兵卒としてつくすと言ったこととの対比で、
選挙責任者(幹事長当時)としての自負、ならびに、
彼は自民党やいわゆる第3党のように、
マスコミを使った空中戦には向いていないので、
地道に、選挙区の隅々を回って選挙戦を戦うという意味
だったのではないのか?
それを長尾氏は、中国への媚びへつらいと曲解した。
あと、鳩山前総理の東アジア共同体論をも批判しているが、
長尾氏の文章に通奏低音のように流れているのは、
「小沢や鳩山は左翼だ」という極めて短絡的な論理である。
長尾氏は、鳩山は地球市民主義者だと書いているが、
それでは米共和党ネオコン派はどうなのだ。
彼らは、転向トロツキストの世界革命主義者ではないのか。
彼らが自らの理想の実現のために起こした
イラク戦争に、自らすすんで加担したのが小泉政権だった。
当時、中西輝政氏は読売テレビの番組で、
「アメリカは世界帝国になる」と言い放った。
この事を長尾氏はどう考えるのだろう。
支持派の方は、
まず、佐藤優氏は、「小沢は悪党になれ論」の延長線上だった。
重要だったのは、薬師院仁志氏。
文章の半分は、政治家の世襲や、民主党の地方分権論の批判
だった(半分当たっていて、半分外れていると思うが)。
あとの半分は、平成の大合併の奇妙さや、
小泉竹中体制の分派である新党改革、日本創新党、
および首長連合への批判であり、
結果的に、彼らと連携する舛添要一氏に対する批判にもなっていた。
薬師院氏は、元々、小泉政権の時代に、
自民党体制を批判する本を出していた人物なので、
建設的批判として、民主党(特に小沢系)は、
彼の言葉に対して耳を貸すべきだと思う。
第2特集の田中角栄待望論。
ここで重要なのは、自民党の長老たちの言葉ではなく、
付録CDに収録されている田中の晩年の演説の、
「日本列島改造論」に関する箇所だった。
これを聴いて私は、
田中角栄は無意識のうちにサンシモン主義者と同じことを
行いたかったのだなと感じた。
後藤新平も同じようなところはあるが、
デモクラシーを政権基盤としている点では、
サンシモン主義者だったナポレオン3世のほうと似ている。
20世紀の同時代人では、
1960年代のブラジルのクビチェッキ大統領とも似ている。
彼は在任中、ブラジリア遷都、アマゾン開発などの政策を行った。
ブラジル内陸部の開発はこの時代から始まる。
面白いのは、クビチェッキの政治的な師匠である
ジェトゥリオ・ヴァルガス大統領の政治的な軌跡が、
小沢一郎氏に似ていることである。
それは、彼が旧支配層(オリガーキー)出身でありながら、
ブラジルのポピュリズム(ポプリズモ)の創始者となった事である。
同じように、小沢氏は、
名望家政党である自民党の政治家として生まれながら、
日本に本当のポピュリズムを根付かせようとしている。
その結果が成功であれ、失敗であれ、
小沢一郎の存在により日本の未来が変わっていく。
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