2010年8月10日火曜日

ゲリマンダーの引き金を引く「1票の格差」訴訟

昨日の夜、8時45分からの
NHKのローカルニュースで、地元の秋田で
今回の参院選においても「1票の格差」は違憲ではとする
訴訟が起こされたことが報じられた。
他でも全国で同じことが起こっているらしい。
「またか」という気分だ。気分が悪い。

この動きがやがて、菅民主党と自民党の政策合意によって
行われるであろうゲリマンダーの最初の引き金を引く
という事を、この人達は理解してやっているのだろうか?
多分、理解していないだろうな。
もし理解してやっているとしたら、
その人物は相当な悪意を持っているだろう。

しかも、一歩譲っても衆議院ならまだ分かる。
参議院で「1票の格差」がどうこう言うのはそもそも論外だ。
日本の参議院は、米仏の元老院、独の連邦参議院に相当する。
だから、今回の参院選では英字新聞や外国での報道では、
参議院は英語でUpper House(上院)と表記されていた。
そもそも参議院(上院)は人口比に左右されない
純粋な地域代表であって(比例代表は1983年までは全国区だった)、
逆に「1票の格差」があってもかまわないはずだ。
だから、今回の訴訟では憲法の条文がどうこういうよりも、
長い目で見た近代デモクラシーの歴史の照らして考えるべきである。

それから今回の動きは、今回のテーマである
ゲリマンダーへ引き金になるだけでなく、
1院制支持派ともリンクしている可能性がある。
この件に関して、また新しい動きがあったら
事あるごとにしつこく書いていこうと思う。

※参議院の英語での正式名称は「House of Councillors」

2010年8月8日日曜日

映画「パッチギ」に対して感じていた違和感の理由が5年ぶりに解けた

今月1日(日)に放映された、
NHKスペシャル「日本と朝鮮半島 第5回 日韓基本条約」を
観ていたら、5年前に映画「パッチギ」を観たときに感じた、
「映画は良くできているんだけど...」といったモヤモヤした
違和感のような何とも言えなかった感情の理由が解った。

この映画は1968年の京都が舞台になっている。
そして、「キューポラのある街」と同じように
この時代では北朝鮮帰国事業がまだバラ色の未来を
もたらすものとして描かれていた。
ただ史実においてこの年は、
65年に日韓基本条約が締結されてからわずか3年であり、
完全に同時代における物語である。
この時代、在日コリアン社会の内部だけでなく、
日本社会においても、
敗戦直後から朝鮮戦争にかけてほど暴力的ではなかったが、
親韓国派と親北朝鮮派の対立と確執がまだ続いていた。

この民団系と総連系と日本社会の3つどもえの確執が
作品のテーマである「イムジン河」発売中止問題を解く鍵であるのに、
「パッチギ」では北朝鮮系と日本人の交流だけしか
描かれていなかった。
これが、この5年間この映画に対して感じていた
微妙な違和感の原因だったのだなと、
今回のNHKスペシャルを観ながら理解できた。
また、この事が、映画の完成度自体は高いのだけれども、
どこかキレイ事の公式見解を観ているような気分の
原因でもあったのだろう。

ただし、ここで注意すべきなのは、
映画の作り手側のイデオロギーとこの事とは
直接は関係ないということである。
この事は映画表現の根底にある普遍性ともリンクする。
作り手が右寄り、左寄り、ノンポリのどれであっても、
政治的にデリケートな問題や事柄をテーマとして
作品を作るには、
作り手の主張うんぬん以前に、基礎知識として
ほんの少し触れるだけでもいいから
わざわざ台詞で出演者に説明させる必要まではいらないが、
作品のベースの部分にそこはかとなく流れていなければ
ならなかったのではないのだろうか?

同様にこの事は、
前述したNHKの番組にも同じことが言える。
その1つの例として、
前回の「第4回 解放と分断 在日コリアンの戦後」において、
朝連(後の総連)の初代リーダーだった
金天海(キム チョンヘ)については述べられていたが、
逆に、民団の初代団長の朴烈(パク ヨル)の名前は
どこにも出てこなかった。
どちらかといえば彼の方が、20世紀前半~半ばにかけての
日韓関係史において重要な人物であるにもかかわらずである。
そこがNHK内左派の弱点なのだろう。
この事は私だけでなく、他にも指摘している人がいるかも
しれない。
ただ、これは制作スタッフの勉強不足でこうなったという
可能性も否定はできない。

そういえば、「パッチギ」の時代設定と同じ1968年に
制作された、
フォークル主演、大島渚監督のそのものズバリ
「帰ってきたヨッパライ」では、
韓国軍のアメリカ属国としてのベトナム派兵も
重要なテーマの一つとなっていた。
映画としての完成度では「パッチギ」のほうが高いとは思う。
ただ、私はどうも矛盾しているようだが、
この映画にも横溢している、初期大島渚映画特有の
若松孝二ともちょっと違う
荒っぽいイデオロギッシュさ剥き出しの作風が
心の中にこびり付いて離れない。
完成度とかイデオロギーがどうとか偉そうなことを言っているが、
本当は単純にこの手の映画が好きなのだろう。

2010年8月3日火曜日

菅直人政権が自民党などと共同で国会議員定数削減とゲリマンダーを同時実行する可能性

7月31日(土)の大新聞各紙(読売、朝日、毎日)に掲載された、
菅総理が記者会見上、国会議員定数の削減(主に比例区)について
言及したという記事を目にした。
(その後、8月2日(日)の各紙には、衆院小選挙区も検討と
書かれていた。)
次の日、8月1日(土)にこれまた各紙揃って
いわゆる「1票の格差」に関する記事が載っていて、
これを読んで、私はハッと気がついた。
これは、菅直人政権は議員定数削減とワンセットでゲリマンダー
実行するというシグナルなのではないのか?

昨年の衆院選直後から、やたらと「一般市民」によって
「1票の格差」は違憲ではないかとする民事訴訟が起こされた。
それをこれまで私は小鳩前政権にたいする側面攻撃とは
認識していたが、それ以上の意図は分からなかった。
しかし、この一連の記事でその本当の意味を理解した。
この一連の司法の動きは、
「1票の地域格差を是正する」という名目で、
ゲリマンダーを行うための布石だった。

ここで「ゲリマンダー」という政治用語及び手法について
説明すると、とんでもなく長くなるので、
簡単に書くと、
「選挙で現体制側の候補者に有利になるように、選挙区の区割りを
 恣意的にいじくり回す行為、及び、その結果生まれた選挙区割り」
となる。(それでもまだ長いが)

これまで、小沢一郎前幹事長とその一派に加えられた
政治的攻撃については、
①検察審査会による一連の「政治とカネ」攻撃
 (これは二重基準の疑いがある)
②樽床伸二国対委員長による小沢派の内部撹乱
 (これには異論もある)
ここまでは小沢派だけに対するもの。
ここからは、
③国会議員定数削減(小沢派だけでなく、
  国民新党や社民党に対する勢力削ぎ落とし)
そして④ゲリマンダーが登場する。

菅総理と彼を支える七奉行たちが、
自民党などや官僚と組んで(消費税翼賛会!)、
国会議員定数削減と④ゲリマンダーを同時に実行したら、
単なる小沢派や国民新党、社民党の弱体化だけでは済まされずに、
これまで国民内部の少数意見を反映してきた
ミニ政党やインディーズ候補が選挙に出馬しても、
当選の可能性が確実に奪われてしまう。
さらに、農村山間部や離島の自営業者や貧困層よりも
大都市圏の富裕層に有利な選挙区割りが、
「1票の格差是正」の名目で行われることによって、
小沢一郎が得意としてきた「川上から戦術」の有効性を
奪うことを「消費税翼賛会」の特に官僚達は目論んでいる。

これは長期的には「平成大合併」に匹敵する
地方切り捨て政策であり、
表面的には普通選挙の形だけはとっているものの、
その実質は一部の支配層、富裕層に有利な実質的な制限選挙で
あるという日本のデモクラシーの歴史に対する逆行現象であるとも言える。
さらに、これにみんなの党や幸福実現党の主張する
「一院制」がワンセットになることで、
最終的にナチスドイツの授権法のような
立法府の完全な形骸化、無力化が完成する。
これこそが憲法違反ではないか。

話は戻って、
昨年から「1票の格差」は違憲であるとして
やたらと民事裁判を起こしていた、
いわゆる「一般市民」たちは、
裏のあるおかしな人間(プロ市民)である可能性が高い。
これは検察審査会メンバーにも言えることだが、
ここでは「政治とカネ」の偽善性については
書き出すと長くなるので書かない。

この①から④にかけての
「消費税翼賛会」の動きと闘っている
小沢一郎や亀井静香前金融相の言動は、
戦時中、翼賛体制に反対して鳩山一郎が1941年に結成した
「同交会」に通じるものがある。
この動きには戦前の無産政党3派から、
社民系の西尾末広や片山哲たちも参加していた。
前にも書いたが、
小沢一郎と鳩山由紀夫が対米従属派や官僚勢力と闘うために
社民党と手を組んだから、
彼らは左翼だというのであれば、
翼賛体制と闘うために社会主義者の西尾末広たちと組んだ
鳩山一郎もまた左翼であるという
レッテルを貼らなければいけなくなる。
そうでなければ辻褄が合わない。
共通の目的のために保守政治家と社会主義者が
手を組むという事は、
政治力学的にもままにあることなのだが、
そのよい例としてゴーリズムもそうである。

話が脱線してしまった。
はっきり言って今回の内容は極論だらけだったのだが、
少なくとも「1票の格差」というキレイ事の言葉の裏には、
ゲリマンダーという恐ろしい政治手法への意図が
隠されているということを、
この文章を読んだ後に、頭の片隅にでもとどめておけば、
これから何か事態が起こっても
対処するためのヒントになるのではと思う。

2010年7月31日土曜日

消費税増税大連立と中川秀直の動向

7月30日(金)の読売新聞に載っていた、
昨年は党内の主導権争いに一旦敗れた
自民党上げ潮派のリーダーである
中川秀直元幹事長のインタビューを読んで考えた。

中川氏は、前回の衆院選以降、
自派の勢力を温存していたようだ。
その上で、みんなの党との連絡を取り合いながら
復権の機会をうかがっている。
その一端として、
民主党政権瓦解後に自公み政権を作るという構想も
考えているようだ。

ここで、現在(2010年7月末)時点の
日本政治の対立図は、

  民主党vs自民党vsみんなの党

という単純な三つ巴の構図ではなく、

参院選直後の週刊ポストの図に修正を加え、
なおかつ今回の中川氏の発言も考慮に入れると、

(外資容認)       (消費税大連立)     (対米独立派)
みんなの党       民主党七奉行派     民主党小沢派
中川秀直一派 vs  自民党主流派   vs  国民新党
(上げ潮派)      たちあがれ日本       社民党
幸福実現党(仮)     新党改革  ←辻元清美─┘   
                         (離党)
       公明党        共産党
       (中立)     (反米のふりをした
                    対米従属派) 

 ※外資容認派と消費税大連立派に竹中平蔵の影響力あり

と同じ三つ巴でもこう分類できるのではないかと考えた。
中川秀直氏は、民自大連立と小沢派との対立の推移を見計らった上で、
次の行動を起こすだろう。
そのシナリオとしては、
前にも書いた自公み政権工作という方法もあるが、
もう一つ、自民党を割ってみんなの党に合流するという
可能性も考えられる。
そのときに、民主党からも何人か引き抜く可能性がある。
多分こちらの方が中川氏にとっては、
自民党内部にいるよりも権力奪取の近道になるのかもしれない。
彼の発言を読んで、
自公み政権樹立が消費税増税問題がネックとなって
不可能となった場合には、こうなる可能性があると考えた。
もし渡辺喜美総理が誕生した場合、
裏のトップとして副総理のポストに就くのではないか?
ただこれは仮定での話であり、
9月以降の政局によってはまた予測が変わっていく。
そのときはまた政界対立図を書き直すことにしよう。

2010年7月28日水曜日

辻元清美離党と民主党七奉行派の社民党切り崩し

今回の辻元清美前国交副大臣の離党は、
社民党と亀井静香前金融相率いる国民新党の連携の動きに対して、
菅政権の実権を握った七奉行一派が牽制のため
社民党切り崩し工作を行った結果ではないかと
ニュースを観て私は思った。
この推論が正しければ、
辻元女史はすでに鳩山政権にいた時点で
七奉行(特に前原国交相)に籠絡させていた可能性が高い。
逆に保坂展人氏らの方は微動だにしなかった。

今回の件で、社民党の一角は崩れたが、
96年に旧社会党が
旧民主党左派と社民党と新社会党の3つに分裂したときのような
大きな崩れ方はしなかった。
ただ、今後も国民新党と社民党の連携に対して、
民主党七奉行派や大連立を支持するマスコミの側からの
切り崩し工作が仕掛けられる可能性があると考えられる。
また、前にも書いたように
小沢チルドレンの一部も切り崩しにあって
脱落する可能性がある。

そういえば思ったのだが、
辻元女史は地元の選挙区の事情を離党の理由にしていたが、
逆に、浮動票でない固定票である
熱心な支持者の反発を買うのではないのかと
私は思ったのだが、実際のところはどうなのだろうか?

2010年7月25日日曜日

保田與重郎、6羽のかもめ、大連立論を少々

18日(日)の産経新聞に、
保田與重郎生誕100年の記事が載っていた。
主な内容は、保田の経歴や5月に行われたシンポジウムの
模様など。
今では親米保守を通り越して
対米従属派が主導権を握った感のある産経だが、
まだ良心的な民族保守派が残っているらしい。
保田についてはこの前にも触れたが、
私は、彼の著作では一般的に知られている「日本の橋」などよりも、
戦後GHQに追放されてからのほうが
より人間的な深みを感じさせて魅力を感じた。
ここ最近(といっても10年以上たつが)の再評価も、
やはり戦後の「絶対平和論」や「祖国正論」などのほうに
より重心が移ってきているようだ。
ドキュメンタリー映画「自然に生きる」は一度観てみたい。
ただ、何度も書くようだが、
中川八洋氏はどう思っているのだろうか?
まさか次の著書で「産経は極左新聞である」とか
書き出しかねないなぁとも思ってしまった。

ここ最近、空いた時間に少しずつ
1974年にフジテレビで放映された倉本聰作、
「6羽のかもめ」のDVDを観ている。
今日やっと12話目に入った。
週刊文春連載の小林信彦御大のコラムに少し記述されていたので、
興味をもってレンタルビデオで借りて観始めた。
観だしたら、「北の国から」以降の倉本作品とは
また違った味わいがあって面白いドラマだった。
同時代のTBS系の久世ドラマ、
「寺内貫太郎一家」「悪魔のようなあいつ」などとも
違う個性がある。
実生活では本当の叔父と甥である加東大介と長門裕之のやりとりや、
中条静夫の後の「あぶない刑事」にも通じる
コミカルな芝居などが印象的だった。
あと、小野武彦やディック・ミネなど、
いろいろな役で今では故人となった人物や
若い頃のベテラン俳優が登場してくるのが面白い。
ただ、これは久世ドラマにも言えることだが、
こういうペーソスと毒のある作品は、現在の放送コードでは
もう作ることができないのは残念というか、
微妙なさびしさはある。

そういえば、22日(木)の毎日新聞で、
政治部記者によるカッコ付きで大連立を支持する
文章が載っていた。
次の衆院選までの3年間に限り大連立をするべきだという
内容。この記者は公明党寄りの人物のようだ。
これは消費税増税論とはまた違うベクトルからの
主張にはちがいない。
ただし、現実政治はそんなに理屈通りに動くのだろうかという
疑問をいだくのだが。

(追記)
25日(日)の読売新聞で、
たちあがれ日本の与謝野馨氏のインタビューが
掲載されていた。
やはり大連立支持の内容だった。
ただ与謝野氏は自分では小沢一郎氏とは
仲が良いとは言ってはいるが、
現時点での本当のところはどうなっているのか?
そう疑問に思うのは私だけだろうか。

2010年7月22日木曜日

消費税増税推進派の現時点での動き

7月19日(月)付の読売新聞に、
消費税増税推進派の最強硬派であり、
自民党ブレーンでありながら
民主党の事業仕分けに仕分け人として参加している
石弘光放送大学学長が、
「民主と自民、政策協定を」と題して
民主党と自民党は次の衆院選までに
政策協定(いわゆる部分連合)を結ぶべきだと書いている。
これは、大連立までいかなくても
民主と自民の部分連合で消費税増税は可能だという
増税推進派の判断からだと思う。

同じく消費税増税支持の、たちあがれ日本の与謝野馨氏が
民自大連立の方向に傾きだした。
さらに、これに小沢一郎氏まで参加させようと言い出している。
彼の親分である中曽根康弘元首相が、
20日発売のサンデー毎日での政治学者の御厨貴氏との対談で
これと同じことを発言している。
これで思ったのは、やっぱり07年の大連立構想は
中曽根、ナベツネラインから始まったのではないか?
だがしかし、今回の消費税増税には小沢氏は反対している。
もっと書くと、小沢氏は新進党崩壊の頃から
一貫して増税反対の態度をとっているので、
今回の大連立の話には乗らないだろうと予測する。
もし加われば政治家としてぶれたことになってしまう。
それに、今年(10年)は07年と政治状況が違う。
6月の菅クーデターと参院選で
国会内の勢力分布がすっかり変わってしまった。
ただし、小沢チルドレンの一部はこの話に乗せられて
消費税増税支持に寝返る可能性はあるだろう。

話が戻って、
読売新聞の別ページで
三浦展氏が消費税について言及していた。
基本的には増税やむなしという話から始まっているが、
最後の部分で、増税という負担に国民が納得して
耐えられるように、
官僚ではなく国民が税金の使い道を決定できるような
しくみが必要であると結んでいて、
増税反対派にも一定の配慮をした発言をしている。
このようなやり方で、三浦氏は言論人として
世渡りを行っていく可能性が高い。

いずれにせよ、部分連合であろうと大連立であろうと
実際の議席数とは関係なく大多数を形成するという意味では、
今回の状況は、05年の郵政クーデターや
昨年(09年)の衆院選よりも
より政治力学的に悪質な部分を抱えている。