2010年7月1日木曜日

中川八洋の新刊「民主党大不況」について思った

この前、中川八洋氏の新刊
「民主党大不況-ハイパーインフレと大増税」が
書店の新刊の棚に並べられていた。

私はこの本を立ち読みしたが、途中で首をひねってしまった。
本当は私は、90年代後半は中川氏の熱心な読者だったが、
2000年代前半から、中川氏の思想分類に疑問を感じて、
そのうち読者になるのを止めていった。
今回も、貧乏の身で中身のない財布からお金を出して
買って読んだ方がよいのか迷っている。
ただ結論からいうと、
中川氏の「真正保守」「民族派」「極左」の分類について
あまりに独断的すぎて、
学問的客観性を欠いているのではないかと思う。

例えば、福田和也氏および故保田與重郎を
極左に分類しているが、
福田氏は石原慎太郎派と中曽根康弘派の両方に二股を
架けていて、親米保守に分類される。
これが自然な解釈ではないのか?
ただし、彼は習近平次期国家主席と天皇陛下の会見時の
一ヶ月ルール問題では、マスコミに踊らされて失敗した。
それを、保田與重郎に関する本を出したからといって
極左に分類するのは奇異に感じる。
故保田與重郎についても、
彼は、佐藤優氏がたまに言及する権藤成卿と同じ
日本型農本主義者で、
当時の言葉では観念右翼に分類される人物である。
彼は翼賛体制および国家総動員体制には反対している。
戦後には、GHQのニューディーラー達により
公職追放された。
彼が若い頃左翼運動の影響を受けたことを根拠にして
極左に分類するが、やっぱり偏った分類に感じる。
他の人物にも言えるが、
若い頃、左翼思想および運動に傾斜して、
その後、保守に転向した人物はかなりいるはずだ。
それがいけないのであれば、
小林よしのり氏も極左ということになる。
(彼は薬害エイズ問題の頃までは左翼リベラルだった)

第2に、小泉政権の評価について。
中川氏は05年の郵政クーデターなどを支持している。
中川氏の定義では、宮内義彦氏は保守ということになる。
また、05年当時、
ホリエモンは天皇制廃止、共和制樹立を唱えた。
私には国体破壊に見えるが、
中川氏の定義ではこれも保守なのだろう。
外資による公共インフラの私物化、
中産階級の消滅、地域コミュニティーの弱体化などといった
新自由主義的政策
(本当は正確な表現ではないがここでは使用する)は
保守主義に適っているということになってしまう。

第3に、トマス・ジェファーソンは左翼ということに
なっている。
しかし、現代アメリカにおいて彼の歴史的系譜に連なっているのは、
ロン・ポールやティー・パーティー(アメリカ茶会党)などの
反中央集権、反国家統制などを唱える運動であり、
彼らは、現在のアメリカでは右派に分類されている。
それに対して、NYの大資本家の利害を代弁したのが、
ハミルトンたちである。その延長線上にあるのは、
クリントン元大統領やブッシュ前大統領の推し進めた
共和、民主の党派を超えたアメリカの世界帝国化政策だった。
そもそもアメリカ合衆国の本来の国体は、
緩やかな連邦共和国であった。
それが、帝国(覇権国)へと変質していったことに、
日本、アメリカを問わず現代世界のかかえる問題の根幹がある。

中川氏は、アメリカが帝国である事を無条件で支持している。
この点が中川氏と故片岡鉄哉氏の相違点ではないかと思う。
このことが、私には日本の保守の抱えるねじれ現象のように
感じられる。
その他にもこの本についていくつかの疑問点が浮かんだ。
どうやら私は中川八洋氏とは正反対の考えに
たどり着いてしまったようだ。
だから話が最初に戻るが、
この本をお金を出して買おうかどうか今でも迷っている。

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